その勘違いがどこかを熱くする
よく知らない競技をみるとき、ルールを永久に理解しないままのタイプです。
このご時世、さっさと検索をかけるなり、誰か詳しそうな人に聞けばすむ。
どうしてかそうしない。
というタイプのかたも多いように思う。
なんというか、そういう楽しみ方もあるんですよね。と言い訳をする。
何をやっているのかよくわからないままに「何かやっている人を見て楽しむ」ということが。
なぜか半分うしろめたいような気分でずるずる見続け、あっという間に時間がたつ。
そんなことはありませんか。まあ、人にしかできない、それも怠け者にしかできない高尚な時間の使い方と言えます。
ところがここに、さらに上手の、「自分が思い込んだルールで観戦する」という輩が出現するわけです。
たとえば今は昔、懐かしの日韓ワールドカップのときのこと。
実家住まいでしたが、家族全員が模範的なにわかファンに染め上がった。
ちょっと話はずれますが、当時は冷蔵庫にドイツ代表のゴールキーパー、オリバー・カーン選手の切り抜きが貼られ、じつにつまみ食いがしにくい雰囲気になっていた。
会社ではスペイン代表のフィーゴ選手について、「見ているだけで妊娠しそう」と同僚とささやきあっていた。
そんな期間中、どこかの試合でなにやらいざこざがあって、フリーキックが指示された。
フリーキックのときって、ディフェンス側は「手を出しませんよ」みたいに、両手を前にまわしていることが多いですよね。
すると両手は見た目、下腹部に近いあたりに置かれる。人体の構造上、たいへん自然な姿である。
これを母が、「ボールが急所に当たらないようにしているんでしょ?」と驚くべきことを言いだした。
試合中の緊張する一瞬が、我が家の茶の間ではでれでれにとけてしまい、母を除く全員が笑い崩れてしまった。
いくら違うだろうと言っても、母は「だってそう見える」と言い張っていた。今だってそう思っているだろう。
「だってそう見えるんだもん」という主張の怖いところは、こっちも別に詳しいわけではないから、言い張られれば言い張られるほど、「もしかしてそうだったりして」などど感化されてゆくところだろう。
しかも、人に確認できるようなことでしょうか。
こうして謎は増えていくのです。